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ものすごく厳しい修行をした人でないと入れないような宗教や、多額の寄付金を積まないと入れない宗教ほど、一度入った人は抜けられなくなる。
後からその宗教が「インチキ」だと感じ始めても、「自分は、なんて愚かな人間だったんだろう」とか「多額の損をした」ということを認めたくない心理が働いて、それを知らず知らずのうちに打ち消してしまう。
そして、いっそう宗教にのめり込んでいく。
マスコミや周囲の人が「インチキ宗教」と言っても、それは自分の認知構造に一致しない情報(認知的不協和を起こす情「我々をおとしめるためにやっているんだ。
宗教弾圧だ」と言うと、そちらの発言のほうが自分の認知と不協和を起こさないから、教祖様の言うことをさらに深く信じたくなる。
このように自分の立場に合った情報ばかりを受け入れて、自分に都合の悪い情報は受け入れないようになることが、悲劇をより深刻にしてしまうのだ。
宗教ばかりではなく、我々の日常生活でも自分に都合の悪い情報を受け付けないということは、よく起こることだ。
たとえば、お金持ちの学者やジャーナリストは、どうしてもアメリカ型の経済を望む傾向がある。
低所得者から広く税金を取って、高所得者に対して減税をしたほうが景気がよくなるという説を主張する人が多い。
アメリカは、お金のある人にとっては非常に住みやすい経済制度、税制がとられている国だ。
同じような制度にすれば、日本でも一部の「勝ち組」と言われる人は非常に恩恵を受け、逆に「負け組」と言われる人はほとんど恩恵を受けない可能性が高い。
そうなれば貧乏な人の活力が奪われる可能性も出てくるし、治安問題が生じることもあり得る。
さらに言うと、金持ちほど収入に対する消費の割合が少ないので、消費不況がさらに深刻になるかもしれない。
自分の立場に都合のよい主張をする人には二種類ある。
一つは、意識的にわざとそういう主張をしている人。
これらの人は、自分の立場に都合のよいことを言っていることがわかっているから、当然のことながら、反論されることを覚悟している。
議論になったときにも、対抗できるだけの準備をあらかじめしているので、論理的なもろさはそれほどない。
前述の例さえ守えば、「日本人は勤勉だから貧しい人はより頑張るはずだ」、「治安問題は外国人対策なので大丈夫だ」などと答えるだろう。
その一方で、自分の意見が、無意識のうちに自分の立場に左右されてしまっている人もいる。
これらの人たちは、反論されることを想定していないので、そこにもろさが出てくる。
「自尊感情」と疑う力自尊感情の高さも、疑う力を奪った大きな要因だ。
スポーツ界では、名選手やスター選手が自分が高い能力を持っているので自尊感情はとても高い。
その自尊感情に惑わされて、「自分くらい能力の高い選手なら、監督も務まるだろう」、「自分以上の選手はいなかったのだから、自分が監督をやるのは当然だ」というように思いがちだ。
選手としては成功したが、監督として成功できるかどうか、監督としての能力があるのかどうか、ということを疑わなくなってしまう。
多少は不安はあるのかもしれないが、自尊感情がその不安を押しのけ、自分の能力を冷静に見られないような状態にしてしまうのである。
っても、教育には素人であったり、教育の実積はないかもしれない。
しかし、それが一国の教育政策の諮問委員会の責任者を何の疑間もなく受け入れてしまうのだ。
ビジネスの世界でも同じだろう。
プレーヤーとして実績を残した人は、「自分なら、課長、部長になったときに、人よりうまくマネジメントができる」と思いがちだ。
能力が高い人ほど、その毘に陥りがちだから要注意だ。
T大出身者も、そうした民にはまることがある。
T大卒で出世した人のなかには、高卒者や中卒者の言うことに耳を傾けず、「所詮は、高卒の意見だ」などと思いこんでしまう人がいる。
しかし、本当は高卒者や中卒者の感覚のほうが、一般消費者の感覚、一般国民の感覚に近いのかもしれない。
それらの人の意見を聞かずに自分の頭だけで判断すれば、失敗する可能性も高まってくる。
大卒者は、「自分は中卒や高卒よりも賢い人間だ」という思いこみを疑ってみることも必要だ。
疑う力を奪う要因には、自尊感情以外に、怒りや落ち込みなどの感情もある。
たとえば、うつ病になると、悲観的な認知が疑えなくなる。
「自分はガンに違いない」とか、「自分はどんどん貧乏になるんだ」というような否定的な認知が次から次へと出てきてしまう。
その否定的な認知が疑えないから、よけいにうつがひどくなり、さらに悲観的な認知になるという悪循環に陥ってしまう。
このように、「感情が思考を支配する」というのは、認知科学の世界では定説化している。
たとえば、私が疑問を感じているのは、安明進という北朝鮮の元工作員の数々の証言、だ。
ニュースで報じられている限りでは、彼は年齢が三○代半ばくらいだという。
計算してみると、技致事件が起こったのは彼が20、30歳頃のことになる。
工作員になってからいろいろな事実を聞かされていたのかもしれないが、少なくとも自分が直接知り得た情報というよりも、誰かから聞いた伝聞情報であった可能性のほうが高いと思う。
しかし、テレビ局が彼の証言を扱うときには、すべてが事実であるかのように扱っているし、また彼も実際の体験談であるかのように語っている。
そもそも、スパイというのは、それを辞めると極端に逆の立場を取る人が少なくない。
彼がどのくらい北朝鮮の中枢の情報を知っていた人間なのか、どのくらい真実の情報を持っている人間なのか、ということを疑ってみることも必要ではないかと私は感じた。
それでも、私たち国民の中に北朝鮮に対する激しい怒りがあるため、「元工作員の証言」と言われると、疑うことなく、「やっぱりそうだったのか、北朝鮮はひどい国だ」という認知を強化してしまうのである。
もちろん、その部分の情報は正しいのかもしれないが、きき出せないと、国防上必要な正しい情報は得られないだろう。
ビジネスをする人にとっては、安価であることがわかっている北朝鮮の労働力がどの程度、質的にあてになるかも大切な情報のはずだ。
それらの証言は、事実正しいことなのかもしれないが、冷静になって疑ってみる姿勢もまた必要なことだと思うし、多面的な疑いの方向性も必要だろう。
「自己愛の満足」と疑う力相手から疑う力を奪、つには、相手の自己愛を満たしてあげるのが一番よい。
たとえば、オウム真理教事件で、なぜT大を出た人や立派な医者が簡単に引っかかり、疑う力を奪われてしまったのかと言えば、やはり、それらの人たちが、○真理教によって自己愛を十分に満たされていたからだと私は考えている。
T大を出たからと言って、企業の中に入れば当面の聞は下っ端だ。
大学の研究室に残っても、下積みは長い。
官僚になったとしても、そこにはT大出の人間がたくさんいて競争は激しい。
受験段階ではT大合格者は注目されるが、社会に出てしまえば、T大を出ていても、それほど注目はしてもらえない。
特に若いうちは、T大出であろうとなかろうと、下積みが続く。
○真理教では、幹部の多くがT大出であったが、○真理教は徹底的な学歴差別をやってT大出を優遇していた。
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